入れ歯の手入れ

?入れ歯を装着したら ぜひ使っていただきたいのが入れ歯安定剤です。テレビの CM なのでよく見かける入れ歯安定剤ですが、実際必要性が分からないという方、どう使っていいのか分からないという方もいらっしゃると思います。
入れ歯安定剤についてのご紹介や、使用することでのメリット、デメリットについて詳しくご説明していきます。
購入を迷われている方、何を買っていいのか分からないという方は、ぜひご参考になさってください。

入れ歯安定剤とは

笑顔入れ歯と歯茎を接着させ、一時的に安定させる製剤のことです。入れ歯の維持、安定に使います。自分にあった入れ歯安定剤を正しく使えば、食生活を中心に、生活がより快適になります。生活の向上に役立ちます。入れ歯安定剤の知識を深めて、楽しく快適な入れ歯ライフを送りましょう。様々な種類があり、入れ歯の種類や患者様の悩みによって使い分けるのがおすすめです。

固定方法 タイプ 装着方法 メリット おすすめの入れ歯
粘着 クリームタイプ クリームで粘着 均等で伸びが良い レジン床、金属床の入れ歯
粉末タイプ 粉で粘着 違和感が少ない レジン床、金属床の入れ歯
シートタイプ シートで粘着 扱いやすく、携帯しやすい レジン床、金属床の入れ歯
クッション クッションタイプ クッションで貼り付ける 2~3日連続使用が可能 レジン床

入れ歯安定剤は固定方法によって「粘着タイプ」と「クッションタイプ」に分かれます。粘着タイプにはさらにクリームタイプ、粉末タイプ、シートタイプという種類があります。

クリームタイプ

特徴

メリットは、クリーム状のため均等に伸びることです。入れ歯と歯茎を密着させて安定をさせます。入れ歯以外のところにクリームが付着するとなかなか除去できないので、気をつけましょう。レジン床金属床の入れ歯に使用できます

使用方法
  1. 使う前に入れ歯を洗って、食べかすや汚れがない状態にしておきましょう。
  2. 水洗いした入れ歯を清潔なティッシュなどでよく拭いて、乾燥させます。
  3. 入れ歯の床の部分(総入れ歯の両側と真中付近)に入れ歯安定剤を少量ずつ塗ります。
  4. 入れ歯にクリームを付けたら、口の中を水でゆすぎ潤しておきます。
  5. 入れ歯を口の中に入れたら、ゆっくりと押し付けます。
  6. ゆっくりと咬み締めて、クリームを伸ばします。
  7. はみ出したクリームはよく拭いておきましょう

粉末タイプ

特徴

入れ歯の床の部分に粉末を広げ、粉の粘着作用で入れ歯を安定させるタイプです。水分を吸うと粉末が密着するため、クリームよりも薄付きで違和感が少なくて済みます。注意しないといけないのは、粉なのでこぼれやすく、慣れないうちは上手に広がりにくいという点です。レジン床金属床の入れ歯に使用できます。

使用方法
  1. 使う前に入れ歯を洗って、食べかすや汚れがない状態にしておきましょう。
  2. 水洗いした入れ歯を清潔なティッシュなどでよく拭いて、乾燥させます。
  3. 入れ歯の裏側(床の土手になっている部分)へ粉末の安定剤をふりかけます。
  4. 入れ歯に安定剤をふりかけたら、口の中を水でゆすぎ潤しておきます。
  5. 入れ歯を口の中に入れたら、ゆっくりと押し付けます。
  6. ゆっくりと咬み締めると、水と唾液で粉末が少しずつ粘着性を持つようになります。
  7. 安定するまでしばらくそのままの状態を保ちましょう。
  8. はみ出したクリームはよく拭いておきましょう

シートタイプ

シート状の接着剤を、患者様の口のサイズに自分でカットして貼り付ける安定剤です。扱いやすく、携帯に便利なのがメリットです。密着させるとシートが伸びて密着性を高めます。うまく広がらない場合があり、慣れないうちは、ずれが生じるときがあります。レジン床金属床の入れ歯に使用できます

使用方法
  1. 自分でシートをカットします。入れ歯の裏側の床部分に合う大きさになるよう丁寧にカットしましょう。
  2. シートを濡らし床にあてがいながら指で伸ばしていきます。
  3. はみ出した部分はハサミでカットしておきましょう。

クッションタイプ

クッション性のある素材で入れ歯の床の部分に貼り付けて使います。安定性があるとともに、咬んだ時に起こる痛みを緩和する働きもあります。べたつきが少ないので、2〜3日なら連続しての使用が可能です。注意しなければならないのは、均等に広がらない場合があること、続けて使用することで咬み合わせにずれが生じることがあることです。同時に、長期間使用していると粘膜の炎症や顎の骨の吸収を引き起こすケースもあります。レジン床には使用できますが、金属床には使用できません

使用方法
  1. 使う前に入れ歯を洗って、食べかすや汚れがない状態にしておきましょう。
  2. 水洗いした入れ歯を清潔なティッシュなどでよく拭いて、乾燥させます。
  3. 安定剤を、適量(パチンコ玉程度)を手に取り、入れ歯の土手の部分へと乗せていきます。歯茎に当たる部分を重点的に塗って、溝の部分が厚くなるようにします。
  4. クッション材を全体にバランスよく広げることができたら、水をつけます。
  5. 入れ歯を口の中に入れたら、ゆっくりと押し付けます。
  6. 2〜3回咬んで、入れ歯を安定させます。
  7. はみ出した安定剤はよく拭いておきましょう

入れ歯安定剤を使うべき3つの理由

1痛みが改善する

咬み締める時に歯茎と床の部分が当たって痛みを感じている方がいらっしゃいます。入れ歯安定剤を使うと、クッションの役目を果たしますので、痛みを軽減することができます。

2会話がしやすくなる

入れ歯にすると歯茎とのわずかな隙間でも空気が漏れて発音しにくくなることがあります。入れ歯安定剤で隙間を埋めることで、空気が漏れなくなり、発音障害を防ぐことができます。つまり、会話がしやすくなります。

3食事がしやすくなる

入れ歯が安定することで、食事の際に食べ物が咬みづらいというようなぐらつきをなくすことができます。

入れ歯安定剤 Q&A

実際に患者様から寄せられた入れ歯安定剤に関する質問について、ご回答します。

入れ歯安定剤は熱湯で洗ってもいいの?

熱湯で洗ってはいけません。

一度安定剤が固まってしまうと、なかなか自分で取り除くのは難しくなってしまいます。熱いお湯をかけると安定剤が柔らかくなってくれそうな気がしますが、熱湯だと入れ歯自体も一緒に変形してしまう恐れがあります。

入れ歯はレジンという素材でできており、60度以上の熱いお湯をかけると形が変わってしまいます。もし入れ歯が変形してしまうと元には戻せません。歯科クリニックで調整するだけでは、元の形に戻すのが難しくなることもあります。自己判断で安易にお湯をかけないようにしてください。

入れ歯安定剤を使って、入れ歯が外れなくなってしまうことはある?

入れ歯安定剤を使って、入れ歯が外れなくなってしまうことがときどきあるようです。

もし入れ歯が外れなくなってしまった場合は、まずお湯を口に含んで入れ歯を温めてみましょう。
この時入れ歯自体の変形を防ぐため熱いお湯は避けてください。60度以下のお湯を5分ほど口に含んで、入れ歯安定剤が柔らかくなるとそのまま外れることがあります。温めのお湯で温めてみても入れ歯が外れない場合でも、無理に外そうとするのは禁物です。無理に外そうとして過度な力がかかると、入れ歯の破損につながってしまいます。入れ歯を作った歯科クリニックを受診し、外してもらうことをお勧めします

部分入れ歯には入れ歯安定剤は使わないの?

部分入れ歯には入れ歯安定剤は使いません。

部分入れ歯には、もともと安定させるためのクラスプというバネがついていますので、入れ歯安定剤を使う必要はありません。もしどうしても使いたいという場合は、クリームタイプなら使用可能です。その際、バネにクリームをつけないようにしましょう。
入れ歯安定剤の使用によって入れ歯と歯茎の隙間に汚れがたまりやすくなります。生活の上でも注意しておきましょう

入れ歯安定剤を飲み込んでしまいました。問題はないですか?

もし誤って飲み込んでしまっても、体に害はありません。

入れ歯安定剤は、もし飲み込んでしまっても体内に吸収されることなく排出されますので安心してください。もともと口の中で使用するものなので。体に害のある成分は入っていません。
ただし、高齢の方に関しては、取り外す際に固まった入れ歯安定剤を誤って飲み込んでしまい、喉に詰まらせる恐れもあります。取り扱う際には十分注意するようにしてください。

安定剤を使っても入れ歯がグラつきます。このまま放置してもいいのでしょうか?

歯科医院で入れ歯を調整しましょう。

グラグラするほど入れ歯が合わなくなった場合は、入れ歯を作成した歯科医院で、調整してもらいましょう。
入れ歯安定剤はあくまでも入れ歯を使用する際の補助具です。入れ歯安定剤ばかりに頼っていると、歯茎の土手の部分に適度な刺激が伝わらず、著しく顎の骨が吸収されてしまうことがあります。そして入れ歯が合わなくなり、安定剤をさらに盛り足して使用を続けるということになってしまいます。こうした入れ歯を間違った方法で長期間使用していると、口にも様々な影響が出てしまいます。

危険!合わなくなった入れ歯を放置するとこんな危険が待っています

1歯茎が退縮してしまう

入れ歯安定剤は歯茎と入れ歯の隙間を埋めて、密着性を高めるために使います。またそれによって安定させることができます。しかし、刺激が歯茎や顎の骨に伝わりにくくなり、逆に歯茎が痩せて退縮してしまうことになりかねません。歯茎が退縮すると、やがて顎の骨の形も変わってきてしまいます。正しい使い方を身につけましょう

2入れ歯がずっと合わないままになってしまう

安定剤を盛り足しながら使っていると、本来の入れ歯の不適合を見落としてしまう恐れがあります。修理を先送りにしてしまうと、虫歯や歯周病にかかりやすくなったり、その間に歯並びが変化して口元の見た目が左右非対称になったり、さらには咀嚼能力が低下することで体のバランスを崩しやすくなるので、注意が必要です

3修理できなくなる

入れ歯安定剤を重ねながらいつも使っていると、歯科クリニックで不具合を調整しようとした時に、調整自体ができなくなる可能性があります。例えば、安定剤がこびりついているために、修理できない、作り変えないと対応できないといった状態にもなる恐れもあるのです。